202号室の、お兄さん☆【完】

「岳リンさんは……」
「何だよ、『岳リンさん』って。岳理か岳リンでいいよ」

岳リンで良いんだ……。

「岳理さんは、うちの父親がこんな所に来ると思ってるんですか?」

大学での、父親の様子なんて知らないが、家族と出かけた事なんてないのに。

「思わない」

じゃあ、何故聞くんだろうか。

「でも、父の口癖の『統計的』に説得して説明できたら、多分来れますよ。
『統計的に家族が、遊園地に行くのは当たり前』とか、ね。
でも、そんな理由で行ってもつまらないから」
「……あっそ」

ばつが悪そうに、気まずそうにサングラスをかけ直す。
馬鹿にするつもりで聞いたのなら、そんな表情、しないで欲しい。


「あれ、乗りましょう」
私が指差したのは、子供用ジェットコースター。
数人の親子が並んでいる中を、カップルで並ぶには些か勇気がいるが。


「あれ、130センチ以上って書いてるぞ」
「なっ 私、155センチあります!!!」

慌てて、『130センチ以下の子は乗れません』と書かれた看板の子供の横に立ち、背比べした。

すると岳理さんは声を押し殺して笑った。

「……冗談だ」


そう言って、頭を2回叩くと、チケットを買ってさっさと行ってしまった。
今、……笑った?
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