202号室の、お兄さん☆【完】
「悪かったわね。中辛と辛口を混ぜたカレーで」
千景さんがカレーを取り上げると、お兄さんはあわあわと弁解する。
「あぁ、2日ぶりの白ご飯……」
泣き出しそうなお兄さんは、切実に焦っていました。
「お兄さん、貧乏なんですね」
しれっと二杯目を食べながら、皇汰は言う。
「こんな幽霊が出るボロアパートよ!? 貧乏じゃなきゃ住まないわよー」
フフフと笑いながら千景さんがカレーを返すと、お兄さんは半泣きでひとくち一口大切そうに食べ始めました。
というか、今、幽霊って言いましたか……?
「小さいカフェをオープンしたばかりで、お金が無いのですよ」
トホホと涙を拭うお兄さんは、本当に困っているようで、私も切なくなってきました。
「お兄さん、何歳なの?」
「あっ、トマト残さないのー!」
私のサラダに、皇汰がトマトを自然な仕草で移してくる。野菜も食べなきゃ大きくなれないのに!
「あの……、その、27なのですが」
お兄さんは困った顔で、また俯いた。
「記憶喪失な為に、あやふやなので、あまり自分の事は分からないのですよ……」
寂しそうに、爆弾発言を落としてきました。