202号室の、お兄さん☆【完】
「これ、先日の植物図鑑の代金です」

会えたら何とかして返そうと思ってた、お金。
封筒に入れて渡すが、やんわりと押し戻された。


「……要らない。怖がらせた詫びのつもりだったから」

そう言うと、首もとに飾っていたサングラスを再びかけ、私を見た。
やはり、冷たくて表情が無くて、身構えてしまう。


「受け取って下さい。
今日だって、私の我が儘で好きでもない遊園地に付き合って頂いたのですから」


そう言うと、岳理さんは頑なに首を振った。



「俺、怖がらせたりビビらせたり、あんたにいっぱい迷惑かけたから、詫びを受け入れて欲しい。
今日も、…………怖がらせたらどうしようか悩んでいたから、遊園地で少し、助かったんだ」
そう言うと、外を見た。
サングラスだから、高くても平気なのかな……?

遊園地の中はライトアップされ、色とりどりで綺麗だし、駅まで続く道も、少しずつ電灯が灯り始めていた。

……岳理さんは、不器用な人なのかもしれません。
不器用で、人と関わるのが上手く無くて、悪気がなく嫌な事をしてしまうのかも。


少し、自分と重なって胸が痛くなってしまいました。
そう思っていたら、いきなり此方を振り返った。
そして、ゆっくり一文字一文字区切る様に言った。






「俺が、監視を頼まれたのは、
あんただったんだよ」
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