202号室の、お兄さん☆【完】
「――えっ?」
「楠木教授に連絡取りたいから、あんたに頼みたいのだが」
「待って! 待って下さい! 誰が私の監視なんか、を……?」
そう尋ねると、岳理さんは無造作に伸ばされた髪を掻きあげて、此方を睨みつけた。
「楠木真絢(まあや)。あんたらの、継母だ」
サーッと血の気が引いていくのが分かった。
何で……?
「俺が、時々おじさんに会いに行くフリをして、鳴海を見に行っていたのを、あの女は把握していたんだろうな」
「……お義母さんと知り合いなの?」
そう訊くとすんなり応えてくれた。
「俺と鳴海がT大理学部数学科1年の時、あの女は4年生」
確かにお義母さんは、30歳だから27歳のお兄さんとなら有り得なくも、ないけど……?
「あの女が何か企んでるんだろ? お前、利用される前に鳴海の隣から出て行け」
「そ、んな」
「楠木教授に、この話を伝えたいから、あんたに連絡を取り次いで欲しい。
そう思って今日、あんたと会いたかったんだが」
もしかして、私と岳理さん、
互いに不器用すぎて遠回りしてしまった、のかな……?
「父は、私がT大に落ちたのが恥ずかしかったらしく、音信不通なんです」
「っち。こんな時に」