202号室の、お兄さん☆【完】
「姉ちゃんっ!!!」
観覧車を降りると、出口に皇汰と千景ちゃんの姿があった。
「何で何回も携帯鳴らしたのに出ねぇんだよ」
両腕を捕まえられ、強く揺さぶられた。
「ごめんね。でも誤解が解けたから、って、岳理さんっ」
振り返ると、岳理さんは遊園地の出口へ向かっていた。
既に、その後ろ姿は小さい。
「みかど、何もされなかったの?」
「そうだよっ。 観覧車みたいな密閉空間で」
……高所恐怖症で閉所恐怖症で乗り物酔いが酷い事は黙っておこう。
「うん。それに、色々お兄さんの事も分かったし、良い人だったよ」
私がそう言うと、2人は顔を見合わせて溜め息をついた。……その顔は全然信用していないな。
口下手で、不器用な岳理さんの代わりに、私が説明しよう。
自分から進んだ一歩の、結果を。
いつかまた、近い未来で、
岳理さんとお兄さんが一緒に笑えるように。
「実は、ね」
今日の日を、無駄にはしないために。