202号室の、お兄さん☆【完】
お兄さんと定宗さんの間には、しっかりとした絆があって、
私にはその絆が無かった、だけ。
繋がっていれば、どんなに突き放しても、絆は壊れないんだ。
なんか……、泣きそう。
お兄さんの後ろ姿が、苦しい。
「す、みません。お兄さん」
勇気を出して、その背中に話しかけた。
けれど、振り返るのを恐れた私は、そのまま後ろを向いて、ロッカーへ駆け出してしまった。
「用事を思い出したので、今日、やっぱり帰ります! 本当にすみませんっ」
そのまま、返事も聞かず、エプロンを急いで脱いで帰ってきた。
必要最低限の家具しかない、ガランとした部屋で、私はアルジャーノンと一緒に窓辺でボーっとしている。
「アルジャーノン、私が悪いのに、胸が痛いんだ……」
何て、自分勝手で、最低なんだろう。
しかも、バイトだって逃げ出してしまった。
……こんなの、更に明日が気まずくなるだけだ。
でも、自分でも分からないけど、お兄さんの背中を見たら苦しかったの。
儚げで、消えてしまいそうな背中を。