202号室の、お兄さん☆【完】
「じゃあ、君たちが見えなくなるまで、俺此処で見送るよ」
美しくウインクしたリヒトさんに、美女2人は顔を真っ赤にしています。
私とお兄さんは、気配を消したまま花忘荘に入っていくと、美女の1人がこっちを見ました。
「やだっ 隣のボロアパート、人住んでるの?」
「高級マンションの隣って惨めねぇ……。お化けが出そう」
「出るよ、お化け。
夜中に、子どもがすすり泣く声がするんだ」
リヒトさんは、真面目な顔でサラリと言う。
「――やっぱり、人通りがあるとこまで送っていくね。
こんなに可愛いと、お化けも寄ってくるだろうし」
そう甘く囁くと、3人の声はどんどん離れて、聞こえなくなっていった。
「お、おおお化けでるんですか!?」
そんな話を聞いてしまうと、花忘荘が不気味に見えてしまうよー。
「――さぁ。僕は見たこと無いですが……」
お兄さんは考え込んでから、花忘荘の周りを見渡す。
「築60年のひび割れたコンクリートの壁、茫々に生えた庭の雑草、高級マンションのせいで薄暗い見た目……。出ない方がおかしいですよねぇ」
「ひぃぃっ」
た、確かに。60年といったら歴史を感じます。