202号室の、お兄さん☆【完】
「ごめんね、みかどちゃんっ 怖がらせた!?」
走って戻って来たリヒトさんは、私の顔を覗き込んだ。
案の定、怖がっている私を見て、申し訳無さそうな切ない表情を見せる。……色っぽい。
トールさんは、妖艶で男らしい色っぽさなんだけど、リヒトさんは甘く無邪気な笑顔が、何故か胸を締め付けてくる。可愛いのに、お茶目なのに、やっぱりリヒトさんも男らしいです。
「おおおお化け、」
「うん。昔ね。もう大きくなったし、出ないよ」
「……?」
そう言って、花忘荘から、隣の高級マンションを見上げた。
「あっちの高級マンションも、千景ちゃんのおばあちゃんが建てたって知ってた?」
「えっ」
「千景ちゃんのおばあちゃん、ここら辺の不動産王だからねー。葉瀬川さんもあのマンションの最上階を買ってるんだよ」
赤い縁のオシャレなメガネを外すと、袖で簡単にこすってまたかけ直した。
「以前はあっちの住民からは、不気味だからって苦情が来たり、駐車場にしろって抗議が来たり大変だったよ……。嫌な事件もあったし、ね」
「嫌な、事件……?」
私が聞くと、リヒトさんは目だけで微笑んだ。
「うん。でも昔々の事だし風化されかけてるから」