202号室の、お兄さん☆【完】
「本当に―? 孔礼寺には鳴海んの母親のお墓しか無いよー」
「葉瀬川さん、うるさいです。みかど、気にしないで入って」
ガルル状態の千景ちゃんは葉瀬川さんを睨みつけながら、私に言った。
私は慌てて入ったのであろう皆さんの泥だらけの靴を揃えて部屋へ入った。
「「みかどちゃん、おかえり」」
やや小さめな声でリヒトさんとトールさんが声をかけてくれた。私は挨拶もそこそこにお兄さんの元へ駆け寄った。
場違いなピンクの枕とピンクの布団で眠る、お兄さん。
険しい顔ではなく、安らかなのに少し安心しました。
気持ち良さそうに眠っています。
「いやぁ、フラッシュバックなんて簡単に起こるもんなんだな」
「ばあちゃん、もしかしてワザと庭を手入れしなかったのかな?」
ただ、皆さんと住んでいるこのアパートが、少しでも綺麗になれば、と思ったのに。
「――私が、お庭を草むしりしたいとか言ったせいです……」
お兄さんの布団をかけ直す手が震えてしまった。
「「みかどちゃんは、何も悪くないでしょ?」」
双子らしく、美しい声まで揃ってますが、私は首を振りました。
「お詫びに、フラッシュバックが起こらないぐらい、綺麗にしたいと思います」