202号室の、お兄さん☆【完】
「え?」
私が首を傾げると、ドラガンさんは苦笑した。

「知識が無いのは、時に残酷だな」

そう言って、前を見て歩き出した。


「ピーマンの花言葉は『哀れみ、同情』じゃ」

――ピーマンに花言葉……?
一応花は咲くけれど……。



「同情で、鳴海殿に構うのは滑稽、滑稽」
「なっ 同情なんてしてません!」

そう言うと、ドラガンさんは振り返らないまま言った。


「記憶も無く、姉も忘れ、あんな土の山で倒れる、『可哀想』な人、だと思わなんだ?」

「思ってなんて……いません!!」
私が叫ぶと、岳理さんが肩を叩いた。


「放っとけ。
悪気はなさそうだ」
そう、ドラガンさんの背中をつまらなそうに見る岳理さん。
けれど、両拳は、力いっぱい握りしめていた。





天気は快晴。

お庭は、草一つなく綺麗。

壁だってピカピカで苔なんて生えていない。


もう、お化け屋敷なんて言われないような綺麗な中で。


私の目的は、何だっけ……?


こんなに庭は綺麗なのに、私の心の中は、つまらない雑草でいっぱいみたいだ。




「此処は、皆の為に綺麗にしたのよ。同情やら哀れみは関係ないわ」
千景ちゃんが、肥料と土を混ぜながら言う。



「本当に哀れなのは、鳴海さんじゃ、ないでしょ?」
< 160 / 574 >

この作品をシェア

pagetop