202号室の、お兄さん☆【完】
「あの、お昼作ったので休憩して下さい」
日が暮れ、遠くでカラスの鳴き声が聞こえるような静寂の中、黙々と花壇に土を入れてくれていた。
汗が滴り落ちる音さえ聞こえてきそうな静さを掻き消すように言った。
「……あんたの、部屋?」
頭に巻いていたタオルで汗を拭きながら、そう聞くので、頷いた。
「邪魔する」
岳理さんはわざとらしく音を立てて階段を上がる。
――とても、冷や冷やします。
そして、202号室の前で、立ち止まる。
「岳理さんっ!!」
小声で制し引きずるように部屋に押し込める。
「積極的だな」
「はい?」
「男を部屋に入れるの」
「!?」
意地悪そうに岳理さんが笑うのが、とても憎らしいです。
こんな、子供っぽい笑い方もできるんですね。
いつも、無言か舌打ちしかしないのに。
「昨日の残りですが……」
私がおにぎりと急いで作った玉子焼きとウインナーを出すと、口の端を上げてまた、笑った。
「子供っぽいメニューだな」
「……またそんな、憎まれ口ばかり。
海苔はあげませんからね!」
私がプイッとそっぽを向くと、声を殺して笑っているのが分かった。