202号室の、お兄さん☆【完】
「おじさんはいいよな」
岳理さんはお茶で濡れた髪を掻き上げて、皮肉を込めて言う。
「漫然と生きて来て、俺みたいなガキには、適わないよ」
ま……まんぜん?
「あんたが、漫画ばっか見てる間に、孔礼寺は、あんたじゃ管理できないぐらいシステム化したから」
葉瀬川さんの顔、ギリギリまで近づいて意趣返しのように笑った。
「もう、おじさんの場所なんてねーよ」
と。
「今は、鳴海んの話じゃなかったの? ――別に孔礼寺なんてどうでも良いけどさぁ……」
しっしっと岳理さんを追い払って、私を見た。
「面倒な事と、楠木先輩には関わりたくなかったけど、もうしょうがないね」
「え……っ」
「楠木先輩の海外出張先、心当たりあるよ」
「えぇ!?」
葉瀬川さんは、私の隣に座ると、更におにぎりに手を伸ばした。
「楠木先輩、製薬会社の研究室に居るんでしょ?
その製薬会社、アメリカのある製薬会社と最近提携結んだじゃん」
「そうなんですか!?」
自分の親ながら、仕事の話なんてしたこと無かったから知らなかった……。
「連絡、取ろうと思ったら取れるよ」