202号室の、お兄さん☆【完】
「楠木教授に用事があるのは、俺」
岳理さんも座り込み、最後のおにぎりを掴んだ。
……2人は私がおにぎりを1つも食べていない事は知らないんだろうな。
「岳リンは初めて私に反抗したから、どーしようかなー」
手で玉子焼きを摘み口に入れると、残念そうな顔をした。
「甘い……。玉子焼きは、塩が好きなのに」
「あの、塩味ならすぐに作ります! なんなら毎日作ります!
だから、父に連絡して下さい!!」
「いいよ」
「えっ」
拍子抜けする程に、間も開けずあっさり葉瀬川さんは言った。
「君が頼むならいいよ」
ふふーん♪と、岳理さんを挑発するように笑うと、葉瀬川さんはのんびりと応えた。
「私は、何億回も言うけど、寺の跡取りには、ならないよ」
ちょっとだけ、弾んだ声で尚も続けて言った。
「口下手な岳リンの本音も聞けたし、首突っ込んで良かった良かった」
「っち……」
その横では、岳理さんが面白くなさそうに舌打ちをしていました。
岳理さんは葉瀬川さんのニヤニヤ顔から顔を背けると、窓辺のアルジャーノンを見ました。
「サボテン……」