202号室の、お兄さん☆【完】
「行ってらっしゃい」
お兄さんが手を振ってくれた。
――それだけで、今は満足。
……それより。
「ねぇ、千景ちゃん」
「ほいほい?」
大学の目の前の信号に捕まり、立ち止まっている時に聞いてみた。
「デートの基準って、何?」
「ぶっ」
全く予期していなかった発言だったのか、千景ちゃんは噴き出した。
「や、あのね、私、デートなんてこの前が初めてだったから!
でも、2人きりで遊ぶのとデートの違いって何なんだろうって、その、……分からなくて」
あたふたしてると、千景ちゃんは少し考えて、首を捻る。
「下心?」
「下心!?」
今度は私が全然予期してない返事に驚く番でした。
「あわよくば仲良くなりたいって思うから2人で会うんじゃないの……? んん? 独り善がりならどうなんだろう」
千景ちゃんは一生懸命考えてくれてます。何か申し訳ないぐらいに。
「また、デートするの?」
「え……!?」
「そんなに悩むって事は岳理さん?」
流石、千景ちゃんは鋭いです。
「お家に行くのはデートなの?」
最大級の私の悩みに、千景ちゃんは妖しく笑った。