202号室の、お兄さん☆【完】
「いっぱい悩めばいいわよ」
答えが出ない悩みは、人に答えを聞くべきでは、ない!
……らしい。
悩まなければ、私は考える事を止められて、真実には辿り着かない……。
「でも、下心、あるのですよ」
「え!? あるの?」
驚く千景ちゃんに頷いた。
「アルジャーノンの仲間を見せてもらいたいから」
「…………」
その瞬間、千景ちゃんのキラキラ妖しく光っていた瞳は、豆粒みたいに小さくなった。
「それに、私、お……」
フッと脳裏にあの優しい笑顔が浮かぶ。
長い睫毛も、サラサラで柔らかそうな髪も、
私の腕を掴む、力強い腕も。
「……好きな人、いるのです」
「みかど」
「こんな、後ろ向きで可愛くない私か、好きになるなんて、おこがましい……から。
努力しなきゃ。心も強く綺麗に、……外見も中学生に見られないように」
好きになるって、ふわふわして、ユラユラして、胸が熱く、……なるんだね。
そして、胸が苦しくて痛くて、……自覚がない時より苦しい。
「立ち話で聞く話じゃ、なかったわね」
「千景ちゃん……」
「あのバカで記憶喪失の貧乏軟弱男、」
……あ、相変わらず、酷い言い草です。
「自由になれたら、みかどの思いも気づけるのに、ね」