202号室の、お兄さん☆【完】

『花が咲かないサボテンなんて、要らなーい』

アルジャーノンは何十年も待ち続ければ、花は咲く。

私は、……私は自分で変わらない限り、花なんて咲けない。


『お前にはがっかりさせられる』

否定、しかされなかった。

否定、しか知らなかった。



『みかどちゃん』

真っ暗でドロドロした感情を、あなたの笑顔は、優しく消し去ってくれる。



『土日は、外に出られない、からー……』


私に光をくれた、人。

私も、あなたの事が知りたい。

それが、どんなに辛い過去だとしても。


全てを知った上で、あなたが好きだと思いたいの。






「みかどちゃん」

それってやっぱり、


「みかどちゃん?」

我が儘なのかな?


「おーいっ」

「ひゃっ!!」


目の前に、たった今まで考えていた、お兄さんの顔が現れた。



「今日はずっと、ぼーっとしてるけれど、大丈夫?」

あっ……!
いけないっ。

今は、バイト中でした。



「19時ぐらいからは忙しくなるから、疲れてるなら休んでてね」
「大丈夫です」


心配してくれるお兄さんに慌てて否定すると、優しく笑ってくれた。そして、ロッカールームへ何かを取りに行った。
戻ってきたお兄さんは、植物図鑑を持っていた。

「あの、この植物図鑑ですがー……」
< 177 / 574 >

この作品をシェア

pagetop