202号室の、お兄さん☆【完】
「はい?」
私がお兄さんを見上げると、
――子どもの様に無邪気に瞳を輝かせていました。
「此方の季節の野菜なのですが、花忘荘の花壇横に、いっぱいプランターが置いてましたよね」
「ミニトマトを育てようか迷ってまして」
そう言うと、お兄さんの顔が更に輝く。
「ミニトマト! 良いですね。
あの、ハーブとかバジルとかも育てられますか!?
お店の料理も手作り野菜にしたら、目玉になりますし!」
「ハーブなら簡単ですよー」
目をキラキラさせるお兄さん、やっぱり可愛い。
「ミニトマト、良いですね。人参やピーマン、芽キャベツ、青紫蘇、嗚呼、調べれば調べるほど、胸が高鳴ります」
……色々調べたのかな?
お兄さんからは季節のお野菜が次から次へと出てくる。
「みかどちゃんが、草むしりしようって言ってくれてから、どんどん夢が広がりましたね!
――本当に、みかどちゃんには感謝します」
「お兄さん……」
「ビオラやサフィニアも、美しい花ですね。みかどちゃんはセンスも良い。花が咲き誇るのが楽しみです」
そう言って、カウンターに置いてあった、卓上カレンダーを持ち上げて、私に見せた。
「以前行っていた、サボテンのある公園、いつ行きますか?」