202号室の、お兄さん☆【完】

きょろきょろ見回すが、入り口の椅子に置物が置かれているだけで、獣の姿はなかった。


「千景さんと……みかどちゃん!」

そこにいたのは、ワックスで髪を後ろに流し、白のブラウスに革の上等な靴、Gパンに黒の腰巻きのエプロンをさらりと着こなした、イケメンさん……?。


「もしや、お兄さん!!?」

気づくのに、数秒かかってしまいました!

だって、昨日のややぼんやり、おっとりした綺麗なお兄さんが、格好良いウェイトレスさんに変身してるんだもん。


「みかどちゃんの引っ越し祝いなのー♪ 安くしてー」

「そうなのですね。では、今日はお金は要りません」


ニコニコ笑うお兄さんは格好良いのだけど、昨日あんなに貧乏だと言ってたのだから、お金は貰って頂かなくては!


「あ、みかどちゃん」

外のテラスで、メニューを渡されていたら、お兄さんは言った。


「ここら辺のボスの定宗さんには、挨拶しましたか?」

「ボス……!?」

「ここら辺一帯は、定宗さんの縄張りですので、挨拶しなければ大変な事になりますよ」

「縄張り……」

やはり、お店とか経営すると、お金払ってヤクザさんと親しくしないといけないんだ!!


「あわわわわっ 定宗さんはどこに居られますか!?」


私は慌てて席を立つ。
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