202号室の、お兄さん☆【完】
その日は、4限まで講義がありました。
18時からバイトだったので、千景ちゃんと食堂で何か軽く食べようと、向かっていました。
サークル活動があちこちで見られ、ジョギングする学生、廊下で歌う学生、ベンチでしゃべっている女子、――どこからか、楽器の音も聞こえていた。
食堂に到着してからは、それに耳を澄ましていました。
「ちょっと!」
ぼーっと、色んな声を聞いて心が落ち着いてきます。
「――眠ってるのかしら?」
と、
聞き覚えのある声に、目を開ける。
「相変わらず、鈍臭いわね。あなた」
なっ……。
お義母さん……。
「ど……したんですか?」
何で大学なんかに……。
大学に場違いな、胸元の大きく開いた赤いスーツ。
テーブルで向かい合っていても分かるキツい香水。
真っ赤な唇に、不自然に長い付け睫毛。
トゲトゲしい、薔薇の様に、妖艶で、フェロモン垂れ流しで、どうしても下品で私は苦手な、人。
「葉瀬川って人、呼んでくれるかしら?」
真っ赤に塗られた唇に、煙草を加え、ライターを取り出す。
「大学内は、喫煙ですっ!!」
慌てて止めると、鼻で笑われた。
「相変わらず、良い子ぶりっこね。
――劣等生のくせに」