202号室の、お兄さん☆【完】
「久しぶりですね。真絢さん」
急に、私の背後から、声が聞こえた。
……此処に、居るはずのない人の声が。
「あっ……」
「岳理くん、久しぶりね」
私が何か言うより早く、義母は甘ったるい猫なで声で、岳理さんを呼んだ。
岳理さんは、灰色の大人しめのスーツに、髪は後ろへ流していた。
……無精ひげは伸ばし始めたのか、顎にうっすら生えてきていましたが。
岳理さんは、反対ににこりとも笑わずにお義母さんを睨み付けていました。
「葉瀬川って奴が、俺のオジサンだとは思ってなかったんだな」
無表情のまま言うと、私の腕を掴み、無理やり立たされた。
「何ですって?」
「あんたみたいな性悪ババアより、馬鹿だけど純粋無垢な子の方が魅力的って事」
「なっ」
お義母さんが、怒りで声を詰まらせた。
「どちらにせよ、学校の許可無しだったら、通報させてもらうよ? 恥かくのはあんただけどな」
こ、こんなにいっぱい喋ってる岳理さん、初めて見ました。
無表情なんですが、お義母さんに敵意も感じられました。
「私との契約はどうするつもり?」
「あんたとの契約はもう終わりだ。あんたの化けの皮も剥がれしたし、な」