202号室の、お兄さん☆【完】
しかも、葉瀬川さんも一緒です。
「……誰? この人」
怪訝そうに、お義母さんを千景ちゃんは見る。
「私の、義母です。不法侵入中です」
「あなた、さっきからね!」
毒々しい赤い爪が振り下ろされ、身構えていたら、葉瀬川さんが間に入ってきた。
「君が、楠木教授の奥さん? こんなに美しいのに?」
あわわわっ 爽やか葉瀬川さんモード中です。
「あらっ 貴男が葉瀬川さんかしら?」
色っぽく上目遣いで葉瀬川さんを見上げ、甘く首を傾げる。
「楠木教授は、大学時代の先輩なんですよ。いやぁ、懐かしい。
先輩はいつ日本へ戻るのですか?」
確かに、爽やかモードの葉瀬川さんはとても爽やかで渋くて格好良いですが……。
いつもの、ゆらりとした面倒臭そうな葉瀬川さんの方が好きです。
「……なんか、女アピールが凄いわね、継母さん」
千景ちゃんも2人の会話をつまらなそうに眺めている。
の、前に。
「岳理さん、何でも喧嘩越しにしたらいけませんっ」
「は?」
「あの人は、父の知り合いとかにも顔が効きます。岳理さんが怒らせたら、葉瀬川さんに被害があるかもしれません!」
私がそう強く言うと、岳理さんは舌打ちした。
「だから、自分に怒りが向けられるように、暴言吐いたのか?」
そう、ポツリと言った。