202号室の、お兄さん☆【完】

「では、真絢さん。今度来る時があればアポを取って下さいね」

「ええ。また、お会いしたいわぁ……」
胸の谷間を視界に入れるように、葉瀬川さんの横に近づくが、葉瀬川さんはにこやかに避けた。


「面白い冗談ですね。千景さんもみかどさんも、一緒に来て下さい」

くるりと方向転換した瞬間、活き活きとしていた葉瀬川さんの瞳が、眠そうなだるそうな、やる気の無い色に揺れた。

私が、お義母さんを一瞥すると、鬼の様な形相で睨まれたので、舌を出しておいた。

反抗されて、目をまん丸にする義母は、初めてみました。





しばらく歩いて、5階の教授の研究室フロアに連れていかれました。
自分の研究室に入った途端に、葉瀬川さんはソファに倒れ込みました。

「んー―…。もう駄目。楠木先輩って本当に趣味悪いなー」

ネクタイを緩めながら、葉瀬川さんは溜め息を吐いた。


「色々、ご迷惑をおかけしましたっ」
「本当だよ。肩揉んで」
「はい!!」

私が葉瀬川さんの後ろへ回ると、千景ちゃんと岳理さんの両方から止められた。


「で? みかどのお父さんいつ帰ってくるって?」
千景ちゃんがドアにもたれて聞くと、葉瀬川さんは欠伸をしながら言った。

「予定では来週の土曜にってさ」

来週……。


 
< 189 / 574 >

この作品をシェア

pagetop