202号室の、お兄さん☆【完】
「彼方です。何か貢ぎ物はありますか?」
「み、貢ぎ物!?」

すると、お兄さんはポケットからお魚型のビスケットを取り出した。

「僕の手作りです。着色料、保存料使用しておりません」

そう言って、私の手に乗せてくれたけど、たった一枚のビスケットで、ヤクザさんは歓迎してくれるのかな……?


「定宗さん、僕の友人が御挨拶したいと」

そう言って、お兄さんは、カフェの入り口から中へ、定宗さんに声をかけた。
店内は、珈琲を飲むサラリーマンやパスタを食べる女性客ばかりなのだが、

ミャアア゛

威嚇するような獣の鳴き、声……?

お兄さんは跪いて、入り口に置いてある大きな置物を撫でた。


「こちら、201号室に引っ越されてきた、みかどちゃんです」

「へ……?」


カフェの入り口近くに置かれた置物とパチリと目が合った。


10キロは有りそうな、厳格のある……猫。

白と黒のぶち模様の猫さんです。

猫さんはまた目を閉じると、スッと右手を出してきました。

多分、これが有名な猫パンチです。


「みかどちゃん、貢ぎ物、貢ぎ物」

「あ、なるほど」

私は慌てて、両手で魚ビスケットを差し出しました。


「若輩者ですが、どうぞよろしくお願いします」

頭を下げると、定宗さんは満足したのか低重音で鳴きました。
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