202号室の、お兄さん☆【完】
「どこ行くの?」
私が踵を返した瞬間、千景ちゃんと目が合いました。
「あは、ははは……」
「うっわ。外車じゃん。金持ちねぇ……」
千景ちゃんに引っ張られ、青いスポーツカーの所へ向かいます。
岳理さんではありませんように、と祈りながら……。
「……遅い」
車の窓が開き、中から不機嫌そうな岳理さんの姿が現れました。
サングラスの上からでも、不機嫌なのが分かりました。
「学生にじろじろ見られるのが嫌なら、目立たない様に来なさいよね」
確かに、校舎や庭から視線を感じてしまいます。
「早く、乗れ」
千景ちゃんの言葉を、無視するかのように岳理さんに言われ、慌てて乗り込みました。
「じゃ、門限は10時だからねー」
千景ちゃんが怪しく笑いながら、手を振っています。
朝からずーっとこんな感じなんです。
「行くぞ」
「あ、お願いします」
そう言うと、車を発進させた。
千景ちゃんは見えなくなるまで手を振っていました。