202号室の、お兄さん☆【完】
「おいっ」
警戒して、向かい側の花壇に座ると、ちょっと機嫌が悪くなりました。
「ムード無ぇやつ」
ムードなんて入りません!!
「どーでも良いけど昨日みたいに、庇われたらすっげ腹立つ」
「岳理さんを庇ったワケではありません」
両者睨み合い、と思いきや、岳理さんは冷たく睨んでいませんでした。
寧ろ、逆の様な……。
「あんたは黙って我慢ばっか
鳴海は周りが我慢ばっか。
全然似合わないって思ったし、
みかどはもっと周りに頼ればいいのに、要領悪くて苛々する」
えっ……。
「俺もおじさんも、あんなババアぐらい怖くもねぇし対応できる。
みかどだって、我慢して黙ってるから向こうが調子乗るんだ。
みかどが手を伸ばせば、助けてくれるヤツはいっぱい居るのに」
あんな、馬鹿な父親の影にいつまでも怯えやがって、と、
岳理さんは、心配そうな優しい瞳で私を見ていました。
――そんな、表情は初めてです。
「鳴海はみかどの良い所を知らない。
俺は、知ってる」
真っ直ぐに、射抜かれそうなほど真っ直ぐに。
「知ってるよ」
私を捕らえて、離さない。