202号室の、お兄さん☆【完】
「すみませんね、なかなか忙しくて」
お兄さんは、カルボナーラとサラダを運びながら、忙しくて、来てくれた私たちと話せない事を詫びてくれた。
店内は、営業部長の下っ端がお行儀よく歩き回っているせいか、10セットはある席は常に満員みたいです。
「忙しい時は、私が手伝ってあげてるんだけど……去年はいっぱい単位落としたから、今年は無理だなぁ……」
アイスコーヒーをストローで飲みながら、千景さんは私を見た。
「みかどちゃん、バイトしてみない?」
「えっ」
「お兄さんのお店だけど、うちのおばあちゃんが資金とか提供したし、バイト代はおばあちゃんがくれるよ」
バイト……。
オシャレなお店で接客……。
未知の世界過ぎて恐ろしいです。私が首を横に振ると、千景さんは私の鼻をつついてきました。
「バイトって、社交性とか社会性とか学べるし、就職活動でも有利なんだよ?
みかどちゃん、勉強しかしてこなかったって言うけど、
まだ勉強しかしないつもりなの?」
目からポロポロと鱗が溢れ出す程に、千景さんの言葉には説得力がありました。
「ね、鳴海さんもバイトが居た方が助かるよね?」
隣のテーブルを片付けていたお兄さんは此方を見て、ふんわり笑いました。