202号室の、お兄さん☆【完】

「その話はもう良いだろ……」
そう言って、部屋を出ろと顎で促すが、ドラガンさんが日本酒を手に取りました。

そしてお酒のラベルを見て、動きを止めました。



「『逢瀬』……?」
お酒好きのドラガンさんは首を傾げ、もう1つも見てまた首を傾げました。

「……『初恋』?」


考え込んだ後、岳理さんに尋ねました。


「こんな日本酒、どこで買ったんじゃ?」
「売ってねぇよ」

岳理さんはドラガンさんから日本酒を奪い取ると、ラベルを剥がしました。



「あんの、くそじじい、人をからかいやがって!」

どうやら、手作りのラベルだったらしいです。


「『逢瀬』と『初恋』のラベルでどうして怒るんですか?」

本当に有りそうな日本酒で、面白いジョークなのに。

そう尋ねたら、岳理さんは呆れた様子で溜め息を吐き出しました。


「お前、本っ当に苛々する」

「えっ」

何で!?
私が驚いていると、2人は岳理さんの肩を叩いた。

「「みかどちゃんは天真爛漫、純真無垢なの。焦っても無駄だよ」」

な、なんで打ち合わせもなく、そんな言葉がハモるの!?


「ま、飲んで忘れましょーや」
ドラガンさんが日本酒を奪い、手の甲でカツンと叩いた。


なんか、私が悪いみたいな雰囲気!!
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