202号室の、お兄さん☆【完】

カフェに着くと、お兄さんは珈琲の準備に。
運転手さんは、大荷物を何往復も運び、管理人さんは定宗さんを膝の上に乗せ、座っています。

――定宗さんが大人しく撫でられてる……。

それと、
物腰、というか立ち振る舞いと言うのでしょうか。

管理人さんは仕草や動作が上品で、洗練された美しさがありました。


ありました……が、


「あの、これは?」

「貴女へのお土産よ」


私に、次々と大きな箱や袋を渡して来ます。両手じゃ既に持てません。

お兄さんへのお土産に関しては、ロッカールームに入りきれない程です。



「海外で人気って評判のトマトパックに、美肌ケアのクリーム、これは貴女の写真を渡してイメージして作って貰ったイヤリング、此方は……」

「ま、待って下さい! こんな身分不相応な品物頂く訳にはいきません!!」

見たこともない高級な箱は、多分ブランド品なんだと思います。こんな小娘が似合うわけないようなお土産で溢れています。


「ごめんなさいね。まだ見ぬ貴女が喜べばと思って、あれもこれも買ってしまったわ」

憂いをおびた眼差しで、見つめられると、大変恐縮してしまいます。
私が戸惑っていると、お兄さんが珈琲を運んで来ました。


「おばさんは、毎回毎回買いすぎなんですよ」
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