202号室の、お兄さん☆【完】
「だって、鳴海さんの喜ぶ顔が見たくって」
そう言って頬に手をやり、困ったように微笑みました。
「前回の時、鳴海さんがベルギーチョコを美味しいって言ったから、今回も買いにいったの。お店なら冷蔵庫が大きいから入るでしょう?」
そう言われ、お兄さんは嬉しさを隠すような真面目な顔をしました。
「ですが、僕1人じゃとても食べきれませんよ!
お気持ちは嬉しいですが、僕も恐縮します!」
そう言うと、今度は管理人さんが真面目な顔をした。
「だって、貴男が私に毎月、学費分だと仕送りをなさるから。
給料の殆どを送るって事は、貴男とても貧乏な生活をなさってるでしょ?
それにまたフラッシュバックで倒れたと知らせが来たら、心配になるのは当然でございましょう?」
そう言って珈琲を一口飲み、鳴海さんを近くへ来るように呼ぶ。
……お兄さん、貧乏な食生活だったのは学費を返していたんですね。
本当の親子以上に、深い絆を感じたけれど、何か少し、お兄さんが一線を引いているみたいです。
お兄さんは、こんなに大切にして下さっている管理人さんにも、やんわりと距離を置いていました。