202号室の、お兄さん☆【完】
お兄さんは、リムジンが消えるまでずっと手を振っていました。
名残惜しげに、見てる此方が切なくなるような、眼差しで。
「管理人さん、素敵な方でしたね」
帰って来たお兄さんにそう言うと、優しく笑った。
「僕の世界で一番尊敬する人で有り、感謝してもしきれないです」
そう言った後、店内を見回した。
そして、困ったように笑う。
「さて、このお土産たちをどうしましょう」
「あ、花忘荘の方々の分は、一応段ボール別に分けました」
カウンターは二個ずつ並ぶ段ボールで埋め尽くされています。
「1人二個だから12個!?」
「あ、いえ、お兄さんだけ段ボール5箱です」
まだロッカールームには日持ちするパスタや缶詰め、冷蔵庫にはチョコやプリンやシャーベットに果実。
「ど、どうしましょう……」
困ったお兄さんがうなだれる。
いつもの判断力がないお兄さんは、ちょっと可愛いです。
「皆さんに連絡してみましょう! 金曜だから少なくても葉瀬川さんは居ますよ!!」
「おばさん、せめて花忘荘の人のは花忘荘へ送って欲しかった……」
多分、直接皆さんと合って、1人ずつに渡したかったんだと思いますが、お兄さんの食べ物類のお土産を優先したら時間がなくなったんじゃないかな……?