202号室の、お兄さん☆【完】
「う、ん……」
「うん、じゃなくてさっ!」
皇汰の、未来を真っ暗にさせる発言に、花忘荘への道のりが歪んだ迷路のように見える。
「姉ちゃんを追い出した事を、もしババアに親父が責めなかったら」
「お父さんは責めないよ。
お父さんは、皇汰だけが大切だもの」
どんどん私の体温は冷えて行くのが分かる。
冷静な激情が、どんどん広がっていく。
「頑張るよ!! たとえ縁が切れても、学費だけは払ってもらう!!」
1ヶ月前までは、私の世界の中心だった人。
けれど、逃げないで見つめあってみようと思う。
「俺も姉ちゃんが出て行くなら、母さんの所へ行くよ」
「……皇汰」
花忘荘までの道のりが長く感じる、沈黙。
夕方の人混みは、会社帰りや学校帰りの人々で賑やかだった。
その中で、私と皇汰は前だけを見て歩いていく。
明日、まずは明日だ。
私が花忘荘に来た事が、もし義母の暗躍があったのだとしたら、私は今度こそ居場所を無くすかも知れない。
けれど、逃げてもいつかは向かい合う事ならば、自分から戦いに挑まなければ!