202号室の、お兄さん☆【完】
「双子が泣きついて来てうるさかったんだよ。早くしろ」
相変わらず不機嫌そうに、指示を出す。
皇汰たちは段ボールを取りに行ってくれた。
私も行こうとしたが、立ち止まって振り返った。
「あの、明日、管理人さんに会います」
「は?」
「花忘荘の管理人さんです! 明日、会います」
「………」
岳理さんは、気怠げに髪を掻きあげて溜め息を吐いた。
「一人で突っ走るなよ」
「……分かってます」
カフェから段ボールを抱えてくる三人が見えた。
「みかどが叫べば、助けてくれる奴は必ずいる」
今、こうして来てくれた人たちを思い、私は胸が熱くなりました。
そうです。私なんかでも、来てくれる人は居るんです。
――だから、お兄さんにも居ます。
少なくても、私と岳理さんは必ず居ます。
だから、叫んで欲しいんです。
小さくても、微かでも、弱音を吐いて欲しいんです。
「岳理さんも、叫べば居ますからね」
不器用で冷たく見えて優しい岳理さんにも、必ず。
「あんたが?」
「へ?」
舌打ちすると、車から出て此方を睨みつけた。
「俺が呼べば、みかどが来るワケ?」
な、んでそんなに真剣に睨んでくるんですか。
「当たり前ですよ」
「…………」
途端に岳理さんは不機嫌になりました。