202号室の、お兄さん☆【完】
朝起きたら、もうリムジンは外に止まってました。
弟が写メを撮る中乗り込み、着いた先は、某高級ホテル。
そのまま最上階のスィートルームへ一直線!
パチン……
パチン……
「奥様、楠木様をお連れしました」
パチン……
「――ありがとう。下がってよろしいですよ」
管理人さんは、此方を見る事なくそう言った。
管理人さんは、昨日とはまた違った薄紅色の上品な着物を着ていた。
花の茎を切り、四方から眺めると、花瓶へと花を差していく。
「ごめんなさいね。おかけになって頂戴」
座ると同時に、先ほどの人がクッキーと紅茶を持ってきてくれた。
「では、ロビーで待機しております」
そう深々と管理人さんと私に御辞儀をすると、足早に去って行った……。
パチン…… パチン……
花を切る音が、緊張を更に増幅させます。
「――落ち着かせようと、花を活けていたら止まらなくて……。最後までやってもよろしいかしら?」
そう管理人さんが言うので、私は何度も何度も頷いた。
紅茶を飲む手がカタカタと震えてしまいます。
「聖マリア女学院は、華道も茶道も着物の着付けも教養の時間にお習いになるのよね」
全て活けた花を、今度は数ミリ単位で向きを動かしていく。
――私が聖マリア女学院である事を、管理人さんは知っているんだ。