202号室の、お兄さん☆【完】
「あら、みかどさん、何か勘違いしてらっしゃるわね」
「へっ……?」
「私が、あの部屋に鳴海さんを監禁しているのよ?」
「ええ!!!??」
「壊れてしまうぐらいなら、私はあの部屋に居て欲しいの。
だから、貴女に賭けてみたいのよ」
そう言って、花瓶を持ち上げて隣の部屋に消えてしまった。
ど、どういう意味なんだろう……?
優しい人、見た瞬間分かった。
優しくて、凛と咲く百合のように美しい人。
なのに、なんでお兄さんを閉じ込めるの?
それに、
義母がお兄さんの姉だとしても、苗字も違ったし、全然似てもないし。
頭がぐるぐるして、吐いてしまいそう。
不安で、不安で、心臓が痛い。
「ごめんなさいね。やっぱり話の順序が上手く決められないわ。
老人の昔話だと思って、鳴海さんの幼少時代を遡って宜しいかしら……?」
私は胸を押さえながら、滴り落ちる汗も拭えず、声も発せずただ頷いた。
「あの花忘荘は、亡くなった夫が住んでいた場所ですの。
夫の遺言で壊して欲しくない、と言うから仕方なく……残しているつもりでしたわ」
麗子さんは鞄からハンカチを取り出した。
「だって、あの方ったらあの場所に愛人を囲っていましたのよ」