202号室の、お兄さん☆【完】
次にお会いした時は、少し元気がありませんでした。
『ねぇねぇ、管理人のおばちゃん』
『何かしら、坊や』
『白ご飯には、ふりかけが一番美味しいよね』
『まぁね』
『海苔巻きも、美味しいよね』
『ええ』
『あーあ。毎日白ご飯食べれたらいいなぁ』
『……え?』
その会話から、私は少し疑問に思いました。
『鳴海さんのお母様は、今は何をしているの?』
『夜、お仕事するから今は寝てるよ。起こしたら可哀想だから僕は外で遊ぶの』
やはり……。
この子、しっかりしたご飯を食べていないんだわ。
年齢よりも痩せて小さく見えるもの……。
私は、そう心配していました。
けれど、
『鳴海、何話してるの?』
『お姉ちゃん!』
そう。鳴海さんにはお姉さんがいました。
私には睨みつけるだけで、挨拶もしない子でしたが、彼女は綺麗なお洋服を着て、健康そうな体をしていました。
『お母さんの話は、他人にしないで』
『あっ 待って! 待ってよ、お姉ちゃん!』
……家族として、この人たちは機能しているのか、私はとても心配になりました。
けれど、急に夫の容態が悪化した為に、私はそれどころでは無く、花忘荘には足が遠のいてしまいました。
鳴海さんの事に少しだけ、後ろ髪を引かれながら。