202号室の、お兄さん☆【完】
次にお会いしたのは、鳴海さんでは無くて、鳴海さんのお母様でした。
突然、依然意識不明の夫の病院にやってきました。
どぎつい香水に、盛られた派手な髪、胸元の開いたドレス。
彼女は、私をじろじろ上から下まで観察した後鼻で笑い、吸っていた煙草の煙を吹きかけてきました。
『あら、あんたがあの人の奥さんだったの?』
『それが、何か……?』
『もうすぐ、旦那様、死ぬんでしょ? うちにも遺産貰う権利があるんで、その話に』
――その時のとても勝ち誇った顔が、今でも脳裏から離れません。
『は……?』
『鳴海、あの人との子どもなんで』
『……認知はされていますか?』
私が冷静に言うと、彼女は煙草を地面に叩きつけました。
『血液検査でも何でもすれば良いわ!』
『そうですか。でも残念でしたわね』
『は?』
『夫には財産なんてありませんわ。婿養子ですもの。岸六田の不動産は、全て私が受け継いでいますの。
後は裁判でも何でもして、貴女から鳴海さんを頂きますから』
そう、これです。
私が、つい彼女を負かしたくて言ったこの言葉……。
これが、鳴海さんが『監禁』される原因になったのです。