202号室の、お兄さん☆【完】
閑静な住宅街にそびえ立つ、2階建ての家。
父の趣味で、
統計学的に地震に強い形で、
統計学的に落ち着く色で、
統計学的な家族の間取り。
つまり、どこにでもある平均的な家。
「姉ちゃん?」
鍵を差し込み回してすぐに、皇汰の声がした。
お風呂上がりのジャージ姿の皇汰が、タオルで髪を拭きながら玄関にやって来た。
「みかどちゃん?」
すぐに、家政婦の美音さんもやって来る。義母の実家が雇っている家政婦さんだ。
「お義母さんは?」
私が尋ねると、2人は嘆息した。
「朝方帰って今も眠ってるよ」
「全く、どこで遊んでいましたのやら」
私はいざ行かん!とばかりに靴を脱いだ瞬間、二階の部屋のドアが開く音がした。
「美音さーん、お薬頂けるかしら? 二日酔いで頭が痛くて……」
紫色のランジェリー姿のお義母さんが、欠伸をしながら二階から降りてくる。
「うっわ! 気持ち悪い姿!」
皇汰は、吐きそうな顔を隠さずに暴言を吐いた。
美音さんが水とお薬を取りに消えると、義母はやっと私に気づく。
「……何であんたが此処に居るのよ」
すっぴんでも、色気のあるぶ厚い唇で、毒を纏う蝶のような義母を、――私は冷静に睨みつけた。