202号室の、お兄さん☆【完】
「で、でも定宗さんが、怪我しちゃったかもしれません!
私、私のせいで……。
――どうしょう。アルジャーノンは悪くないのに、定宗さんにアルジャーノンが嫌われてしまったら……」
下っ端猫ちゃん達に、毎日トゲを抜かれるかもしれない。
そのトゲで、更に猫ちゃん達が怪我でもしたら……。
どうしょう。どうしょう。
全身から血の気が引いていく。まずは、定宗さんの怪我を手当てしなくては!
「一緒に僕も探します。定宗さんの居場所は結構知っているので」
「でも! お兄さんはお仕事が……」
すると、お兄さんは安心させようと優しく笑ってくれた。
「第2、第4水曜日は、午前中はお休みなのです。定宗さん達のご飯を作るので」
そう言って、出来上がっているホカホカのお魚型ビスケットを手の平に乗せる。
「急いで探しましょう。謝れば、きっと分かってくれますよ」
お兄さんの両手には、ビニール袋いっぱいのビスケット。
私は救急箱を握り締めて、『花忘荘』を見上げた。
ごめんね。アルジャーノン。
――必ず、誤解は解くからね。