202号室の、お兄さん☆【完】
花忘荘に戻れば、静かな202号室にはお兄さんが居る。
何もまだできないもどかしさや、知ってしまった罪悪感やら、苦しさやらが私を襲うと思う。
壁一枚がとても苦しい。
「夜ご飯はー?」
「お、おかまいなく!」
そう言ったにも関わらず、葉瀬川さんは、茄子のお浸し、鰺の南蛮漬け、きのこのお吸い物、椎茸の肉詰めを慣れた手つきで作り上げてしまった。
自炊歴1ヶ月の私には、これを作れるまで何年かかる事やら……。
リビングは、テレビとテーブルとソファのみで少し寂しかったですが、寝室以外の部屋は、本棚の森になっていました。
漫画で床が抜けないか心配です。
「麗子さん、怖かったでしょー?」
「へ!?」
きのこのお吸い物を味わっていた私は、慌てて顔を上げた。
「やれ結婚しろだの、ネクタイが曲がってるだの、お風呂に入ってるのかだの、姑みたいにガミガミさー」
最初意外は当たり前の事だと思うのですが……。
「私もね、昔、興味本位で鳴海んの話聞いちゃったから君の気持ち分かるよー」
「え?」
「美味しいご飯は心も温かくするよねー」
や……。なんかズレているような。
「君もいっぱい苦労するねー」
面倒だよねー、と椎茸の肉詰めを盗られた。
……最後に食べようととってたのに