202号室の、お兄さん☆【完】
「私はね、若者はいっぱい悩んでいっぱい荒れたら良いと思う。
この年になると、鳴海んは同情するはするけど、達観しちゃってさー」
そう言うと、冷蔵庫から缶ビールを取り出して、パキッと開けた。
「麗子さんね、鳴海んを養子にしたかったみたいだけど、周りが凄く反対したから身元引受人にしかならなかったのを凄く後悔してるから、鳴海んに激甘なんだよねー」
「確かに大事にはされていましたね」
「でもさ、つまり鳴海んは人生において、逃げちゃいけない『自分を見つめる戦い』を放棄してるワケだから、私の美学には反するんだよね……」
そう言って、缶ビールを飲み干す仕草が、大人の余裕な雰囲気を出していました。
お酒を飲む姿に色気を感じてしまいます……。
「もっと若者は青臭く悩めばいいんだよ。それは人生においてかけがえのない宝になるんだし」
「あの、葉瀬川さん」
「ほいほい?」
全てに達観して、漫然とする葉瀬川さんだからこそ、ちょっと気になっていた事を聞いてみた。
「漫画を通して『生』やら『死』やら『愛』やら語ってますが、それってお坊様みたいですよね。
どうしてお寺は継がないんですか?」
住職している葉瀬川さんは想像できるぐらい、お似合いの職業だと思うのに。