202号室の、お兄さん☆【完】
そう言うと缶をクシャッと潰した。
「岳リンは実力で、分家を黙らせたんだ。岳リンしかあのシステムは扱えない。
だから、私が孔礼寺に顔を出しても大丈夫って言いたかったんだと思う」
そう言うので、とても安心しました。
岳理さんの優しさは伝わりにくいから、葉瀬川さんも誤解していたら……と思ったから。
でも流石、大人です。分かってました。
「岳リンは良い子だよね」
「舌打ちしますけどね」
「顔もなかなか凛々しくて、格好良いよね」
「そうですが……」
何故か葉瀬川さんがにっこにこ機嫌が良いので、――怖いです。
「今日ずっと、岳リンのメール無視してるのは何で?」
「!?」
「岳リンが心配して私にまで連絡して来たよ? ねーねー」
きょ、興味本位でも聞かないで欲しいです。
自分でだってよく分からないのですから。
何も入っていないお茶碗の中を、箸でかき混ぜていたら、葉瀬川さんは諦めたように笑った。
「気をつけなよ。岳リン、むっつりだから」
「い、意味が分かりませんっ」
もしや、理由も聞かずに家に入れてくれたのは、これを聞く為ですか?
むぅー! 大人ってずるいです……。