202号室の、お兄さん☆【完】
それから私とお兄さんは、色んな場所を探しました。
橋の下、猫の集会場、よく日向ぼっこする屋根や塀の上、スーパーやコンビニ、
けれど、ナワバリが広すぎて全然見つからないです。
時計は10時を過ぎました。お兄さんは懸命に探してくれているけど、もうお店の時間です。
「あの! 後は自分だけで探してみます。本当にありがとうございました」
深々と頭を下げ、お礼を言うが、お兄さんは首を振ります。
「僕も心配なんですよ。お店に、休みの看板だけ飾ってきます。千景さんにも協力頼みましょう、ね?」
「……すみません。本当にすみません」
申し訳なさすぎて、涙で視界が滲んできた。
鈍臭くて、いっつも行動を起こすと裏目に出て、迷惑かけて、本当に自分が惨めったらしい。
「やはり、お店にも来てませんね」
『closet』の看板を内側からかけながら、辺りを見回すが、定宗さんの姿はありません。
もしも、酷い傷を負っていたら……。
「私、この周り見てきます!」
「みかどちゃんっ」
走り出そうとした私の腕を、お兄さんは掴みました。
「……落ち着いて?」