202号室の、お兄さん☆【完】


「私は、来週父親と戦いますっ。
逃げずに戦います!」

カラランと、立ち上がった拍子に餌箱がひっくり返ってもお構いなしで続けます。


「私が意見を言うなんて、差し出がましいのですが、フラッシュバックを起こして、倒れたり、その度に記憶を無くしたり、大切な人を忘れるぐらいなら、




――お兄さんにも、戦って欲しいです」




ぐるぐる考えても、何も良い言葉や案が浮かばなかった。

けれど、お兄さんを親友だと今も心配してくれている人もいるんです。

それなのに、その人を忘れて、
辛い事からも逃げて、

その上に胡座をかいているお兄さんの優しさは、……少し悲しいのです。




「みかどちゃん……」


「あ、アルジャーノンや私にいつか花が開くって言ってくれましたよね?

お兄さんだって咲きます!
綺麗な花が咲きます!
でもその花は、水を貰って光を貰って長い間、身体の中で育った栄養です。
雨の日も雷の日も、雪の日も、負けなかったからです」

な、何を言いたいのか分からず、後から後から出てくる言葉をただひたすらまとめずに、吐き出す。





「辛かった記憶も、全てお兄さんを作ったものだから、


忘れないで欲しいです!」
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