202号室の、お兄さん☆【完】


階段途中で、しばし無言のまま。
座って後ろから抱き締められる異様な状況ですが、
岳理さんは離してくれそうにありません。

どうにか、状況を打破するべく会話の糸口を探さなくては……!


「ほ、報告が遅れたから報告しに来たんです」

「んなもん、メールか電話で良いだろ」

「け、携帯、電池切れてしまって」


「――みかど?」

み耳に囁かないでー!!

「名前呼ばないで下さい……うぅ」

岳理さん、 一緒に居ると、

怖いし、緊張するし、

苦しいのに……。


今はとても、安心します。






「お前、俺に会いに来たんだろ?」



そう言われて、全身の血が一瞬で沸騰したのが分かりました。


「違います! 違います! 大はずれです!!!
きやぁぁあぁ!!!」

「お前、うるさい」

く、首筋を今、噛まれました!
そ、それに微かに髭も当たるし、シャンプーの良い香りもするし、


「うわぁぁぁんっ は、離して下さい! か噛まないで下さいぃい う」

もう、限界でした。

「う?」

岳理さんが聞き返してくれたと同時に


「うえぇえーん」

糸が切れたように緊張が溶け、
泣き出してしまいました。


「色気のない泣き方だな……」

やはり岳理さんは呆れてます。
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