202号室の、お兄さん☆【完】
それから、鐘も鳴る事もなく。
私が泣き止むまで、ずっと岳理さんはだ、……抱き締めてくれました。
――鼻水だらけのブサイクな顔を見られなくて良かったけど。
落ち着いてきたら、タオルを渡されたので鼻水やら涙を拭くと、クッと笑われました。
――お兄さんの過去。
――義母との関係。
――私の身勝手な暴走。
全部、拙く、言葉に詰まりながらも話すと、岳理さんはずっと黙って聞いてきてくれました。
「じ、自分が恥ずかしいです……」
「…………」
「でも、この先もお兄さんは、岳理さんを忘れて、笑って生きるのも変だし嫌なんです」
そう言うと、岳理さんは私の髪をすくい上げ、指先で遊び出した。
「だったら、答えは出てるだろ?」
「うぅ……」
「別に、みかどは恥じる事ねーよ。時間が欲しいとか甘えてる鳴海に問題があんだよ」
「で、も、でもぉ!」
「お前、もう喋るな」
また泣き出した私に、タオルを押し付けてきました。
本当に、岳理さんの優しさは分かりづらいです。
「ありがとうございます。
すみません、急に押し掛けて」
「全くだよ」
岳理さんは依然私を離さないまま、座り込んで自分の裸足の足を見て溜め息を吐きました。
――裸足のまま、追ってきてくれたんだ……。