202号室の、お兄さん☆【完】
「……嗚呼っ」
お兄さんは支えてくれていた岳理さんをやんわり押すと、子どもの様に何度も何度も首を振りました。
「お前も、諦めろって」
震えるお兄さんに、岳理さんは舌打ちすると、腕を掴んで起き上がらせました。
「お前が、何に怯えてるか、何で記憶を忘れてるのか、俺たちは全部知ってるし」
そう言って、此方を振り返った。
「全部受け止める、絶対に」
呆然と岳理さんを見つめるお兄さんに、私もゆっくり近づきました。
すると、怖がり数歩下がられましたが、私も反対の腕を掴みました。
「辛い過去に捕らわれないで欲しいです。
一緒に楽しく過ごして、楽しい過去を作りたいです」
『それ』は、
自分に言っているのか、
お兄さんに言っているのか……。
過去に縛り付けられて、
未来を諦めて、
人と距離を置いて、
――傷つく事なく生きていくのが、全てではないです。
お兄さんが一歩を支えてくれたんです。
私は、アルジャジーノンみたいな統計学の実験体だったのを、
お兄さんが言ってくれたんです。
花は絶対に開くって。
だからお兄さんも、花を諦めないで。