202号室の、お兄さん☆【完】
「――何やってるの?」
何故か手に新品の鍬(くわ)を持っている千景ちゃんが道路から此方を見ていました。
「何で、岳理さんが居るの? ねえ!」
千景ちゃんは驚きながらも、テラスへ入ってきます。
すると、お兄さんは私と岳理さんの手を振り解きました。
「……たかった」
真っ赤な顔をして、泣きそうな顔で精一杯笑って言いました。
「思い出したく、なかった……」
そう言うと、頬を一滴の涙が伝いました。
「僕は、可哀想な……惨めな子どもです」
「お兄さんっ!」
そう言うと、千景ちゃんを押しのけてて、道路へ飛び出しました。
「お兄さん!!」
「みかど!」
追いかけようとした私を千景ちゃんが止めました。
「何でこんな事になってるのよ! あんたはもっと慎重にしてくれるって思ってたのに!」
お兄さんの傷ついた顔に千景ちゃんも戸惑っていました。
それは私も反省しています。いくらでも土下座します。
けれど……!
「後で説明するから、お兄さんを追いかけて!」
傷ついた顔のお兄さんは、
多分、全て思い出したんだから。