202号室の、お兄さん☆【完】
千景ちゃんがお店を閉めてくれている間に、私と岳理さんは花忘荘へ向かいました。
庭には、新しい土や鍬、スコップが置いてありました。
――千景ちゃんが用意してくれたのかもしれません。
お兄さんが野菜を育てたいと言っていたから。
コンコンッ
202号室を叩いても返事はありませんでした。
ドアに耳を寄せても、物音1つしません。
「お、お兄さん!! 居ますか!? お兄さん!」
すると、隣の203号室が開きました。
「鳴海殿なら、走る様に階段を上がり部屋に入ったぞ」
そう、呑気に欠伸をしながら言いました。
「あ、ありがとうございます!! ドラガンさん嫌い月間終わりにします!」
私がそう言うと、ドラガンさんは目をパチパチさせた。
「まだ嫌い月間だったんかい……」
――すみません。
けれど、ドアを叩いても反応が全く無いんです。
まるで、土日の202号室みたいに。
「岳理さん、私の部屋へ! 部屋の壁の方が薄いから、聞こえるかもしれません」
そう……。
外壁は鉄筋コンクリートなのに、部屋同士はテレビの音が聞こえるぐらい薄いのです。