202号室の、お兄さん☆【完】


「嗚呼、壁が……」

壁の向こうには、ポロポロと泣くお姫様が、悲痛な面持ちで座り込んでいました。


壊れた壁の周りをスコップで削り始めた時、巨大なシルエットが私の頭の上をひらり。

軽やかな身のこなしで壁に頭を入れたのはーー…!!


「さ、定宗さん!」


ミギャアアアア!!

頭を突っ込んだ定宗さんが、両手両足で壁を蹴って暴れています。



「ちょ! 自分の体格を考えなさいよぉ!」

「駄目じゃ! 抜けぬ!」

「「えー、次は、『おおきな定宗』って事?」」


「定宗の周りを壊すか?」

「んー? ご老体には可哀想だよー」

皆さんが色々と策を思案していた時、本当に漫画の様なシーンを目撃しました。



「定宗さん! 顔を怪我してしまいます!」

お兄さんのその一言で、

ミギャア!!!!


ピキピキピキと稲妻のようなヒビが定宗さんの周りを走り抜け、 壁が、

定宗さんの周りの壁が、簡単に壊れてしまったのです。



「す、げー……」


私もびっくりしすぎて、誰が言ったのかも分かりません。

皆さんが呆然としている中、
人が1人は抜けられるぐらいの壁の穴の向こうに、


砂埃と、定宗さんを抱きしめるお姫様の姿が見えました。
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