202号室の、お兄さん☆【完】

私がガンガン音をたてながら上がって行くと、岳理さんがお兄さんに話しかけました。


「せっかく鳴海も記憶が戻って嬉しいんだが、もし鳴海と……」

「はい?」

「鳴海と好きな奴が被ったら面倒くせーなぁ」

そう言って、ポケットから煙草を取り出しました。


「そん時は譲れよ、お前」

火をつけると、空へと煙を吐き出しました。

私は、敢えて2人の会話を邪魔せずに横を通過しました。


お兄さんの顔を見ると、落ち着いた微笑みを浮かべていますた。



「譲れませんから、願わくは被りませんように、ですね」

「……っち」

そう言って、2人は202号室へ入って行きました。


……い、今のは何だったんだろ?
なんかちっちゃな火花が見えたような……?

なるべく2人の会話を聞かないようにしなくちゃ!


「何、百面相してんの? 姉ちゃん……」

玄関に突如、皇汰が現れて冷たい目を向けられました。


「俺もう帰るから、時々はメール頂戴よ」

「うん、皇汰もね」


そして、開いた壁の穴を見ながら、不満そうに呟きました。




「なんか、あの2人、初めて会った時と印象が変わってムカつく」

「へ?」

「変な虫、つけんなよ」

そう言うと、壊れんばかりに玄関を閉めて、帰って行きました。

ちょっぴりご機嫌ななめ……みたい?
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